10月8日

誰にでもある誕生日に、何も感慨はないのだが、忘れられない誕生日というのがある。1998年のこの日だ。この日はふたつの特別なことが起こった。ひとつは、私の応援している野球チームがこの日のナイトゲームで勝って、38年ぶりのリーグ優勝を果たしたこと。もうひとつは、ドル円が前日に続いてこの日1日で10円以上暴落し、2日間トータルで20円以上の下落を見せたことだ。
この晩は忙しかった。まずは優勝の瞬間を見ようと、テレビ観戦していたが、荒れに荒れたドル円相場のために、ロイターのポケット端末とも、にらめっこをしなければならなかった。この年の春に150円近くまで上昇し、8月まで140円台で推移していたドル円は、アジア危機を受けて9月には130円台に下落。そしてそれまでのキャリートレードの強烈な巻き戻しにあい、10月6日にはついにNYで130円割れ。そして翌7日には130円そこそこ
から1日で120円割れの118.80をつけ、そしてこの8日にはアジアタイムに反発した高値の123円台から、ロンドンタイムに一挙に111円台まで暴落したのである。
バリバリ現役の銀行ディーラーだった私は、ポケット端末の他にロイターのホーム端末を
自宅に備え相場を見ていたが、さすがに二日連続の暴落にほとんど手をだすことができなかった。いや、かえって中途半端に手を出さずによかった。 さすがに逆張りの買いを入れてやろうと思い、日にちにちなんで108円台に当てずっぽうの買いのオーダーをだしたが、結局この日ドル円は111円台でUターンして、NYの終値は118円台だった。
ドル円はその後110円台でしばらく落ち着いた。贔屓の野球チームはその後日本シリーズも勝ち、その年の日本一になったのだが、ドル円が2日連続で10円以上暴落することも、このチームがリーグ優勝することも、その後の20年でまだ1度も起こっていない。